2018年1月19日金曜日

裸々ランド

ブリジット『ニュ』
Brigitte "Nues"

 Viens on pleure on pissera moins.
さあ来て、泣くのよ、そしたらオシッコの量が少なくなるわ。
("Palladium") 
女の人たちって、そういう親密な仲になったらこんな話をしているんだろうなぁ、って思う。それを歌にできるかって言うと、そういうわけにもいかないんだろうど、この二人ならできる。ブリジットはデビュー時から「女ウケ」のするアーチストだという印象がある。それも姉御肌。同年代より少し上の頼もしい人。
 80年代にそれをやっていたのが、故フランス・ギャルだったと思う。ミッシェル・ベルジェの詞曲とは言え、そのメッセージは姉御のそれで、
Résiste(抵抗するの)
Prouve que tu existes (自分が存在するってことを証明するの)
Cherche ton bonheur partout, va (自分の幸せを至るところで探すの)
Refuse ce monde égoïste(このエゴイストな世界を拒否するの)
Résiste (抵抗するの)
Suis ton cœur qui insiste (こだわる自分の心に従うの)
Ce monde n'est pas le tien, viens (この世界は自分のとは違う)
Bats-toi, signe et persiste(戦うのよ、自分の名で、頑固に)
Résiste (抵抗するの)
(フランス・ギャル "Résiste"  1981年 詞曲ミッシェル・ベルジェ)
なんて言われて、元気づいた女性たちは多かったと思う。図らずも、21世紀の今、その役をやっているのがブリジットの二人だろう("Battez-vous"とかそういう歌の数々)。  デビューして10年。ギター・フォークから出てきた百戦錬磨。シリヴィー・ウワロー(1970年生、47歳)+オーレリー・サアダ(1978年生、39歳)、双子姉妹(メタファーですよ。「ロッシュフォールの恋人」と同じほどに)のように見えて、実は8歳も歳が離れている不思議。女同士っていいなと思うのは、このペア感覚が歳が関係ないっていうところ。男はそうはいかなくて、年上はどうしたって「先輩」なの。この二人、一緒に泣きあったり、笑いあったり、喧嘩しあったり、が同等=フェアーなのがよくわかるし、ベッタリな時とそうでない時のバランスもはっきりしている。よくある女同士の関係なのかもしれないけれど、実にうらやましい。女の人たちにとってもうらやましいのだと思う。だから良き姉御なんだろう。
 ”Nues"(女性形・複数形の"裸"。つまり複数の女性の"裸”)。「女同士の裸って、そんなに自慢できるもんじゃなくて、素(す)の姿で、見せ合ってホッとするもの」だそう。 いいなぁ。
あなたが泣いてる時もあなたはきれいよ
あなたはエレガントな憂いがあるし、ブルースでもウキウキするようなの
あの男が外に行ってしまったなんて、そいつは目と耳が不自由なのよ
ポーズをとる必要なんかないわ、だって私たちは大人物じゃないんだから
さあここに来て一緒に泣こう、そしたらオシッコの量が少なくなるわ
いつもと同じことよ、過ぎ去ってしまえば何でもないわ
来て、また去っていくのよ
2年も経ったら、笑い話になるわ、あなたも私も
来て、「パラディウム」(※)に連れてってあげるわよ
ロックンロールと一緒に飲もう、くだらない古いヒット曲に乗って
(※註:ジョニー・アリディ、エディー・ミッチェル等にも登竜門だった60年代からのパリのロックンロールの殿堂 Bus Palladium
わおっ。お姐さんたちは、こうやってアホだった恋を葬ってくれるんだ。 素晴らしい。こういう歌は、そういう場面になってもならなくても、女子たちに歌い継がれますよ。

<<< トラックリスト >>>
1. Palladium
2. Sauver ma peau
3. La morsure
4. Le goût du sel de tes larmes
5. Mon intime étranger
6. Zelda
7. Tomboy manqué
8. Paris
9. La Baby Doll de mon idole
10. Insomniaque
11. Carnivore

BRIGITTE "NUES"
CD/LP Boulou Records / Columbia / Sony Music
フランスでのリリース:2017年11月17日

カストール爺の採点:★★★☆☆

(↓ "Palladium"オフィシャル・クリップ)

(↓ "Palladium" 国営TVフランス5の番組 C à Vous でのライヴ)


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